サイレンサーを外そう。力づくで。
前回の記事で、ラシーンのマフラーが錆びて朽ちかけていて、
更にどうやら前オーナーが乗っていた時点で、一回パテ補修が入っている事が確認できました。
あまり事態はよく有りません。
なにはともあれ、此処から先のステージの修理をするためには、サイレンサーを外さなければなりません。
特に今回は中間パイプ側のフランジにダメージが行っているため、
可能なところまで分解して、現状確認を進める必要があります。
固着したナットが立ちふさがる
ただ問題なのは、このナットが外れるかです。
見るからに錆びて固着して手強そう。凶悪な外観をしています。
作業に取り掛かる前に、色々情報収集をしたのですが、とにかくマフラーなど下回りのボルトはほぼほぼ固着。外すのに 「本当に苦労する」 という声を沢山見聞きしました。
自分もその例に漏れず、でした。。
対応策①:ラスペネで潤滑する。
まず自分はマフラー外しの作業に取り掛かる前に、自分が知っている中で最強の浸透力・潤滑力を誇る、ワコーズのラスペネをスプレーしておきました。
この手の潤滑剤は、KURE工業の55-6などが有名ですが、浸透力と薬液の保持力という点に関しては、経験上ラスペネが最強だと考えています。やたらと揮発しにくい割に、あとに残ってベタベタもしない、という不思議な性質です。
家で扉の動きが悪くなったり、鍵が回りにくいといった、「身の回りの困り事レベル」の作業では5-56をよく使いますが、車・バイクの整備においては、値段は張りますがラスペネのほうが効果が高いと思います。
結果:
大概のボルト・ナットは、ラスペネを吹き付ければ外れます。
ただ、今回のマフラーを留めているフランジボルトは強敵でした。
ラチェットハンドルに14mmのソケットを取り付け、背筋が盛り上がるのを感じるほどの、渾身の力で回します。
1個は外れたものの、もう1個がびくともしない。何度も力をかけ続けていたら、ズルリとナットの角が1箇所舐めてしまいました。
対応策②:バイスグリップを使う。
がっちり噛むことで有名な、バイスグリップ。
これでナットやボルトの頭を強大な嵌合力で固定し、無理やり回すというのもオーソドックスな方法です。
自分もこれを試しました。
結果:
2度3度、4度と舐めてしまいました。
ナットの頭というか、6個の面がズルズルと削れていきました。
いやー滑る滑る。
こうなってしまうと、14mmのボックスレンチ、メガネ、スパナを入れても、全く引っかかりません。
最悪の事態になりました。
良い道具も、使いドコロを間違えると結果を悪くしてしまいます。
そのよい例かと。。。
対応策③を考える。
この段階では自分はかなり悩みました。
手持ちの道具では外れないことが明確になってしまったからです。
対応策としてあげられたのが、
- ナットブレーカーを使ってナットを割ってしまう。
- フランジナットなので、根本が割れないと基本的に意味が無い。それに狭いところでは使いづらい。
- 自動車整備工場に持っていく。
- 仮ナンバーをつければ動かせるけど…走れるか不安。
- ローダー借りるのもなんか気が引ける。お金かかるし。
- マフラー、特に中間パイプごと切断。
- 溶接とか補修が非常にやりづらい形状。
- 勢いに任せて早まったことはしないほうが良い。
- このまま再度パテ埋め
- 腐食がどこまで進んでいるかわからない以上、短期間の延命にしかならないと思う。
ひとしきり思索を巡らせたのですが、すぐにはいい対策が思いつきませんでした。
そんな時、ある工具の存在を思い出しのです。
コーケン(メーカーHP)というメーカーが出している、ナットツイスターと呼ばれる工具です。ボックスレンチ/ソケットと同じようにして使います。
評価も高く、良い口コミを多数見聞きしていた工具です。
ソケット1個で2000円オーバーと、この手の工具にしては結構な値段がするのですが、藁にもすがる思いで購入しました。
対応策④:コーケン ナットツイスター
ご覧のように、ナットのかみ合わせの部分が花びら形状になっています。
スパイラル形状に繰り抜かれているのがお分かりでしょうか?
このエッジの部分がガッチリと噛みこむことで、ナットやボルトを強力に固定し、強制的に回して外すせるような設計になっています。
その結果はと言いますと…
ばっちりと外れました。
手前が通常のボックス/ソケットレンチを使って外れたナット、奥のほうが、舐めてしまったもののナットツイスターで外すことが出来たナットです。
丁度作業している側から見えづらい部分がなめていたので、目視確認するのは初めて。
感覚的に結構なめてるだろうなぁとは思っていたのですが、まかさここまで盛大にやられているとは思いませんでした。
エッジが3箇所なくなっている。50%近く欠損しています。中身を見てもかなりサビが進行していて、コンディションは限りなく最悪より。
それでも外れました。すごいぞナットツイスター。
頑強に固定していたナットが、回り始めた時の
パンッ!!
という弾けるような音は、歓喜の号砲のような感じがしたのを覚えています。
嬉しかったですぶっちゃけw
外した後の状態
サイレンサー側
ゴロンと地面に平置きされたサイレンサー。
入り口と出口が同じ面にあり、箱のなかで消音させるという大掛かりな仕組みです。
外す時は、太い針金のようなステーにツリゴムで固定されているので、これまたラスペネを拭きまくって潤滑させ、すべらせるようにして外しました。
それにしてもかなりの大きさです。僕が使っている枕3個分くらい有ります。こんな容積使ってまで消音しなければならんもんでしょうか? ただ実際排気漏れしている状態だと、たかだか1500ccの車なのにうるさいのなんの、って状態だったので、必要な容積なのでしょう。
ひっくり返しました。日産のロゴ、カルソニックの文字が見えます。これが普段地面を向いている面です。
刃物で引き裂かれたような跡があり、そこからおもいっきり錆びています。ここからの排気漏れは確認できなかったものの、朽ち果てるのも時間の問題だったでしょう。
購入する際、
「前のオーナーさんが、バックしてたら擦った、とか言ってたよ」
と言っていたので、おそらくその時に付いた傷なのかも知れません。木だか石だかコンクリだかにヒットしたと推定。
ステーの腐食、というか錆びて変形しています。
サイレンサーのフランジ部分。
猛烈に錆びています。
いくら母材が鉄とはいえ、ある程度はメッキとかの表面処理はしているはずなので、それを食い破っての腐食。製造されてから15年、寒い街で走るとこんなになってしまうのか。。
そしてフランジの裏側。
作業している時には気づかなかったのですが、こっちにもパテ埋めの痕跡が有りました。白っぽいのはシルバーの防錆塗装でしょう。パテ埋めした後にスプレーしたようですが、下地処理を完璧にやりきれなかったことと、塗装厚みも薄かったようで、結局また錆びてしまっています。
画面の上の方のフランジとパイプの付け根は、クラックが入っています。ここからも排気漏れしていたのか??
というわけで散々な状態のサイレンサーでした。15年間お疲れ様。
この後、この子は産廃処理場に持って行きました。
宇都宮市の場合、通常の粗大ごみの回収施設に持って行ったら、
「自動車部品は引取やっていないんですよ~」
と大変丁寧に断られました(皮肉じゃないです。ほんとうに丁寧な応対でびっくりしました)。回収施設の近くにあった、民間の回収業者に持って行ったら、
2000円で有料引き取りしてもらいました。
中間パイプ側
こちらも、サイレンサー側に負けず劣らず、というか顔が引きつるようなサビを見せてくれました。
合わせ面だけ見たら、フランジ強度に影響があるような腐食は無さそうですが、
フランジと中間パイプの溶接部は、腐食で完全に崩壊していて、おおきな穴が開いていました。排気漏れの犯人はこいつです。
いや~分解できてよかった。
よくよく見ると、溶接部のフランジ内側の「盛り肉(溶かして盛り上がった金属)」が軒並み無くなっている。内側からもしっかり補修しないとこれは危険だ。
マフラーのパイプなんかは、どこのメーカーさんが作って日産に納入していたんでしょうが、作業者の熟練度が足りなかったんじゃないか??と思わせるような出来栄えです。
外側から見るともっと衝撃的。
よく残ってくれていましたね、と逆に感心するようなレベルです。全体の1/4~1/3くらいの肉がなくなっていました。
てかこれ溶接した肉(金属)なの?樹脂系のパテなの?マイナスドライバーでこじっても崩壊しなかったから金属だと思うけど、、、
これでマフラーを支えていたと考えると、残りの寿命的にギリギリだったんだなぁと感じてしまいました。
とにかく、ようやく補修の準備が出来ました。
次回から修理に入ります。
これを直して車検通すレベルまで持っていきます。
↓次工程はこちら
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